脱毛の種類
「美容脱毛」は、大きく分けると「美容電気脱毛(永久脱毛)※」と「美容ライト脱毛(除毛・減毛)」の2つに分けられます。それぞれの違いについて詳しくご紹介します。
また、一般的に最も行われている一時脱毛(自己処理)についてメリット・デメリットをご紹介します。
※美容電気脱毛は、FDA(米国食品医薬品局)がPermanent Hair Removal(=永久脱毛)と認めた脱毛法です。
美容電気脱毛(永久脱毛) | 美容ライト脱毛(除毛・減毛) | |
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脱毛効果 | 永久脱毛 |
除毛・減毛 |
脱毛の歴史 | 約150年の歴史があり、膨大な臨床データによってその安全性や確実性が保証されている。 | 日本では、2000年代からエステティック業界で美容ライト脱毛がスタートした。 |
脱毛できる毛と皮膚の種類 | 今生えている全ての毛に対応が可能。成長期、退行期の毛に対応可能。また、白髪や産毛にも対応可能。全ての皮膚に対応可能。 | 成長期に当たる毛に有効だが、退行期・休止期については不向き。 また、皮膚と毛の色に差がない場合や白髪や産毛にも不向き。 |
脱毛期間 | 毛周期に合わせて処理すれば、例えば腋(ワキ)なら約1年~1年半で終了。 ※効果には肌質・毛質・毛量により個人差があります。 |
毛周期に合わせて照射するが、1ヶ月以上の期間をあけて定期的に施術を受け続ける必要がある。終了という概念はない。 |
毛周期ってなに?
毛は、活発に毛母細胞が増殖と分化を行って一定の期間成長し続ける「成長期」と、毛母細胞の増殖が停止し、毛包の収縮が始まり退縮していく期間の「退行期」、毛母細胞が消失し、発毛を停止している期間の「休止期」というサイクルがあります。それが毛周期です。
「休止期」の毛包は毛隆起の位置まで退縮し、棍棒状になった棍毛が溜まっています。棍毛は次の成長期の毛に押し出されて脱落する毛もあります。(部位により、毛周期が異なります。)
一時脱毛(自己処理)について
▼一時脱毛(自己処理)のメリット
- • いつでも手軽に処理できる。
- • 方法によっては短時間で広範囲の処理が可能。
▼一時脱毛(自己処理)のデメリット
- • やがて毛は再生するので、永遠に続けなければいけない。
- • 何度も繰り返すのがめんどう。
- • 脱毛直後の皮膚が敏感になる。
- • 繰り返すことにより、色素沈着・毛穴の目立ちなど皮膚トラブルが起こる。
- • 再生する毛が太くなったり硬くなったりすることもある。
一時脱毛(自己処理)を続けているとこんなことに!
カミソリによる色素沈着
カミソリ処理後の毛穴の目立ち
ワックス処理後の肌荒れ
毛抜きによる毛包炎
▼処理前
- • 傷ついた皮膚から細菌が入らないよう、器具も皮膚も清潔に!
- • 蒸しタオルなどで皮膚をやわらかくします。
- • 剃る場合は、石けんの泡やシェービングクリームを必ず塗ります。
- • クリームやブリーチ剤など薬剤を使う場合は、まず小さな範囲で試して、皮膚に合うかどうかを確認してください。
▼処理後
- • やはり、皮膚を清潔にキープします。
- • 皮膚に赤みのある場合は、冷やします。
- • 皮膚に刺激の少ないローションやクリームをつけます。
- • 薬剤を使用した場合は、皮膚に残らないようしっかりと洗い流してください。
- • 処理後すぐは、強い日差しや海に入るのを避けてください。
脱毛の歴史
有史以前から鋭利な石器や動物の歯などを用いてこすり切られ、脱毛が行なわれていたと推測されていますが、ここでは紀元前4000年頃からの脱毛の歴史について紹介します。
紀元前4000年 | 紀元前3000年 |
紀元前4000年から3000年頃の地中海地方や古代オリエントにおいては、すでに脱毛剤が使用されていました。これは宗教や歴史の文献に、体毛の除去についての習慣や法律が記されていたもので、古典的な脱毛剤である“Rhusma turcorum”は、硫黄、石灰及びでんぷんを含んでいて、水でペースト状にしてオリエントのハレムの女性達に広く用いられていたようです。また、地中海沿岸の国々では、ヒモが用いられていました。指の間でヒモを操作して、ヒモに毛を挟み込んで抜くのです。この方法は現在でもこの地方で用いられています。 |
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紀元前1500年 | 紀元前1500年頃の書物によると、エジプトでも脱毛剤が使われていた記述があります。それによると当時の脱毛剤は「焼いたハスの葉を油と一緒に亀の甲羅の中に入れ、カバの脂肪を加えた」ものだったそうです。 |
紀元前30年 | 紀元前40年から30年頃、エジプトの女王クレオパトラも当時流行していた脱毛剤でムダ毛を除去していたことが報告されています。古代エジプトの工芸品の中には、ブロンズのカミソリや近代の床屋さんが使っているような、長い刃のカミソリも発見されています。 |
平安時代 8世紀~12世紀 |
日本では平安時代に貴族の女性達などが、額(ひたい)の形を整えるために、余分な毛を抜いて眉墨ならぬ“ひたい墨”で足りないところを書き足していたそうです。 平安中期「毛のよく抜くる銀(しろかね)の毛抜き」は「ありがたきもの」であるように、この頃から毛と美容、とくに脱毛には関心が高かったようです。 |
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江戸時代 17世紀~19世紀 |
江戸時代の遊女は、平たくて小さい軽石を二つ使い、陰毛を間に挟んでこすり切ったり、線香で焼いたりしていました。この方法だと切り口が滑らかで、チクチクしないのが、良かったようです。 手足の毛の処理には、日本でも脱毛剤が使われていたことが、江戸時代後期(文化文政期)の書物に記されています。この脱毛剤は「木の実から取ったアブラと、軽石を砕いて粉にしたものを混ぜた」もので、これを手のひらで皮膚にすり込むことで、毛を磨耗させて切るという方法です。アフターケアは、うぐいすのフンをぬり、へちま水をつけるようにと、アドバイスされています。 江戸時代後期の女性が眉毛の下の方を剃っていたのは「眉毛と目の間を広く寛(ゆったり)と見する」ためでした。また、毛抜きで眉毛を整える様子も浮世絵などに描かれており、一般女性の間では頭髪や眉毛の脱毛が広く行われていたことがうかがわれます。 しかし、浮世絵には女性の腋の毛が描かれていることから、当時の女性は腋毛の処理はしていなかったようです。 |
江戸時代 | 明治時代 19世紀 |
19世紀には、永久脱毛を目指して様々な脱毛法が行われていました。例えば、肌に直接硫酸などの薬品を塗ったり、毛を抜いた後でわざと汚れた針を毛穴に入れる、というものでした。毛穴に炎症を起こしてそれによって毛穴をふさごうとしたのです。もちろん永久脱毛の効果がないばかりか、肌を痛めて醜いあとを残すことになったようです。 1875年アメリカの眼科医チャールズ・ E・ミッチェル(Charles E.Michel M.D.1833-1913)医師により、直流電流を用いて逆さまつ毛を永久的に除去する方法が考案されました。これが電気分解脱毛法の始まりで、顔などのむだ毛の処理に応用することが試みられましたが、処理時間がかかり過ぎました。 |
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20世紀 | 現在 |
1916年アメリカのポール クリー(Paul.Kree)氏が、6~10本のプローブが使用できるマルチプルプローブ電気分解脱毛器を発売、併せて電気脱毛士のトレーニングや一般の人々に対する電気脱毛市場の拡大に貢献、その後、プローブが36本使用できる電気分解脱毛器も開発されました。この市場拡大につながる活動により電気脱毛は医師から一般の脱毛士へと広まりました。 1920年代フランスの医師アンリ ボルディエ(Dr.Henri Bordier)により高周波脱毛法が発表されました。1940年代半ば、高周波脱毛器に真空管が使用されるようになり、機器の確実性と安全性が増し、高周波法の使用が促進されました。現在では、オートマチック・タイマーの使用やコンピュータ化により操作も簡単に、結果も一定で信頼性の高いものになりました。 1945年アメリカの電気脱毛技術者ヘンリー E.セイント.ピエール(Henri E.St.Pierre)とエンジニアのアーサー R.ヒンケル(Arthur R.Hinkel)の共同開発によりブレンド脱毛法が開発されました。電気分解脱毛法と高周波脱毛法を組み合わせたブレンド脱毛法は、1948年に特許登録されました。 1960年代頃から日本では洋装ファッションの流行や女性の社会進出などに伴い、身だしなみの一部として女性のワキの下の脱毛が流行しはじめました。 1970年代日本にブレンド脱毛器が輸入され、エステティックにおいて電気脱毛技術者による施術が行われるようになりました。市場の拡がりに伴い国内でも脱毛器の開発・製造され、日本人の肌質や毛質、用途に合わせてブレンド脱毛とフラッシュ脱毛(高周波脱毛)のテクニックの使い分けができる多機能型の脱毛器も市場に出ました。 1983年アメリカ ハーバード大学のロックス アンダーソン博士(Dr.Rox Anderson)が、選択的光熱融解理論を発表。これは、ある一定のレーザーの波長・照射時間を最適化することで、周りの組織には影響を及ばさずに特定の組織のみを選択的に反応させることができるものです。この理論に基づきレーザー治療への応用が進み、レーザー脱毛の研究も発展、1997年には日本にもレーザー脱毛器が輸入されました。 1999年頃から大手の参入もあり、日本でメンズエステ市場は急速に拡がりました。特に20~30代の若い男性の美容意識の変化から、職業的な必要性、髭のカミソリ負けやむだ毛の解消を目的とした男性の脱毛美容が始まったようです。 2000年代に入り、日本のエステティック業界では、医療用レーザー脱毛とは違う出力の弱い、いわゆる美容ライト脱毛/光脱毛が開発され、脱毛市場が拡大しました。美容ライト脱毛/光脱毛は、可視光線から近赤外線領域の波長(400~1200nm)をパルス化して照射するもので、皮膚組織の色素が特定の波長の光を吸収する性質を利用しています。 近年、美容ライト脱毛の除毛・減毛効果が理解され、再び美容電気脱毛ニーズが高まり、性別や世代、部位の広がりが見られます。 特にメンズ脱毛では、「毛が無い方が、清潔感がある」というイメージが流行し、単に髭を薄くするだけではなく、髭のデザイン脱毛が確立しました。加えて、男性の腋やVIO脱毛も増加傾向にあり、これはヨーロッパのアスリートの影響もあるようにいわれています。 シニア世代では、介護を受ける準備として脱毛しておきたい、というVIO脱毛の希望もあります。また、親が子供の毛が濃いので脱毛させたい、という小学生のキッズ脱毛にも広がりを見せています。このように、消費者自身が脱毛部位やライフスタイルに合わせて、より適した脱毛法が選択できるようになっています。 |
参考文献
- • 「ELECTROLYSIS」 1981年 Julius Shapiro著
- • 「江戸入浴百姿」 1992年 花咲一男著 三樹書房
- • 「新版枕草子-付現代語訳」 1979年 清少納言著 石田穣二訳注 角川ソフィア文庫
- • 「都風俗化粧伝」 1982年 高橋雅夫校注 平凡社
- • 「電気脱毛国際会議’93 講演集」 1995年 日本スキン・エステティック協会
- • 「むだ毛の話 脱毛法」 1983年 日本スキン・エステティック協会
- • 「2004年度版エステティックサロンマーケティング総監」2003年 矢野経済研究所
- • 「エステティシャンのための美容電気脱毛学」2007年 日本スキン・エステティック協会
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